国会会議録
 

 

 

 

 

 

   
 
財政金融委員会 平成18年06月01日



○委員長(池口修次君) ありがとうございました。
  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
  これより参考人に対する質疑に入ります。
  質疑のある方は順次御発言願います。
○田村耕太郎君 参考人の皆さん、今日はありがとうございます。時間が限られてますんで早速質問に入ります。
  池尾先生の話、執行が大事だという話、全くそのとおりだと思うんですね。この法律の成否は執行の効率を上げられるかどうかいかんに私もかかわっていると思います。
  監視体制についてお伺いしたいんですけど、監視体制で監視委員会の強化ということがよく言われまして、私もこれ大賛成なんですね。人員も予算も増やすべき、もうこれは当然のことだと思います。
  もう一つの監視体制としては、私、証券取引所の監視体制がもっと充実強化されるべきだと思うんですね。監視委員会と東証の役割分担というのがあると思うんです。監視委員会というのはもう逮捕するのが目的ですから、まあぶっちゃけた話ですね、やはり泳がせるということが大事になってくる場合もあるんですね。しかし、泳がせている間に投資家が被害を被る可能性があるわけです。それを防ぐのが私は証券取引所の役割だと思うんですね。
  どういうことかというと、ニューヨークやナスダックでやっているようなアーリーアラームですか、タイムリーアラーム、早期警告制度ですね。とにかく、例えば今不正な取引が行われた可能性が高いですと、これから調査に入りますと。この株の動きはちょっと異常です、これから調査に入ります、問題があるかもしれません、そういうことを個人投資家にもしっかり伝えていく、こういう体制の強化が私必要になると思うんですね。とにかく早めに、異常な取引があった場合、それによって株価に影響を与えるかもしれないというおそれがあるわけですけど、しかし、ねじ曲がった可能性のある株価を放置しておくことの方の罪が大きいと思うんです。
  証券取引所における執行の効率を上げるための早期警告制度、私、強化すべきということを自民党本部でも酸っぱく東証の役員の方々に言っているんですけど、この辺り、池尾参考人はいかが思われますか。
○参考人(池尾和人君) 御指摘の趣旨はそのとおりだというふうに思います。
  それで、金融規制に限らず、一般に公的な規制というのはある意味でちょっと矛盾した構造を持っておりまして、規制をする側とされる側を考えたときに、規制をされる側の業者の方が実は、自分自身でビジネスをしているわけですから、ビジネスに関する情報は豊富に持っているわけですね。で、規制をする側の当局というのは間接的にかかわっているだけですから、情報は少ないわけですね。そうすると、情報を余り持たないものが情報を持っているものを規制するという非常に基本的に矛盾した構造がありまして、そういうのを経済学では情報の非対称性というふうに表現しておりますが、その非対称性があるんですが、その情報の非対称性が金融取引の場合は年々深刻になってきているという面があると思います。
  これは、金融取引が複雑化、高度化していく中で、実際にビジネスをやっている人間が何をやっているかというようなことについて、なかなか監督当局が十分な情報を得られないというふうな傾向が世界的に強まっていると思います。
  そういう構造がありますから、金融規制の場合には自主規制機関の役割というのが非常に重要になる。その業者と公的規制当局の中間に存在して、今申し上げたような情報面のギャップを埋めながら、全体として規制の、ルールの遵守に関しての実を上げていくというふうなところで自主規制機関の役割というのは非常に重要、以前から重要ですが、ますます重要になってきているというふうに考えます。
  それで、日本証券業協会も自主規制機関ですが、証券取引所の役割は御指摘のように非常に大きいと思います。例えば株式の分割の、百分割とかの例があったわけですが、あれに関しても東証は一応の警告はしていたんですが、商法で分割を認めた、法律で認めたのを取引所がいけないというふうに言うのはどうかというようなところで多少遠慮があったようで、事後的に考えますと十分な警告を果たさないままに過ごしてしまったという面があったかと聞いております。
  今後はそういうところの遠慮はなく、自主規制機関としての役割をやはり果たしていっていただく必要があるというふうに考えております。
○田村耕太郎君 次に、越田参考人のお話の中で投資教育というお話が出たんですが、私も正に賛成だと思うんですね。賛成なんです。投資教育というのは、貯蓄から投資の流れを進めるという意味でも大切ですけど、その中で私、重要になるのは二つのポイントだと思うんですね。
  私、今の投資のノウハウ本が非常に出回っていることに対して非常に危惧を抱いています。といいますのは、投資のノウハウ本いろいろ見てみますと、本当にこんな本で、まあもうかるのかということもありますけど、こういうやり方を教えていいのかということですね。
  何が欠けているかというと、まずは投資道徳が欠けていると思うんですね。投資というのはもう尊い行為なんだと、投資を通じて社会の発展に貢献していくんだという、こういう投資道徳みたいなのをアメリカで教えているわけですね。しかし、日本で投資教育というと、投資の技術向上とか昔からあるようなチャート分析とか、ああいう本ばっかり出ているんですけど、本来の投資道徳を教えてから投資の技術を教える。投資の技術というのは、単純にもうけるためじゃなくて、不正行為を行う可能性があるものに対して自己防衛能力を高めると、そういう意味もあると思うんです。
  まずは投資道徳を教えて、そして投資技術を教える、それがあっての投資教育だと思うんですが、いかが思われますか。
○参考人(越田弘志君) 正に先生のおっしゃるとおりでございます。投資道徳という点に関しては、昨今のいろんな、ライブドアを始めとしたマスコミが取り上げている問題にいたしましても、法律上問題がある点はもちろんのこと、法律の盲点を突くような点が散見されます。かつてならば、当局に問い合わせてそれは芳しくないという答えが返ってくればそれで収まるもの。ただし、法律上問題がないという解釈をすれば法律の趣旨を無視して強行するという面が出ておるんではないかと思います。正におっしゃるとおりでございまして、自己防衛能力を高めるためには投資教育は必要であると。
  例えば、昨今問題になっております新規公開株を登録を受けてない業者が勧誘する、そして詐欺的な行為を働いて被害者が出ておるということがマスコミに出ておりますけれども。例えばSECにおいては、SECのホームページに、ある新規公開株、出るという、これに応募してくださいというような一つの、何といいますか、例えとして掲げて、それに応じてきた顧客に対して、このような甘い条件でこんな非常にぼろい話でどうしてあなたは応募されるんですかというような反対のリサーチをやっておるということを聞いておりますけれども。
  私ども一番心配なのは、やはり投資そのものの原理原則を正しく理解していただいて、そしてリスクも十分御承知の上で投資していただくということが必要であって、ましてや自己防衛能力ですら自分で維持できないというところは非常に日本の投資教育の欠如の最たるものだと考えておりまして、先ほど申し上げましたように投資教育の重要性を感じております。
  政府当局のアンケートの結果あるいは我が業界でのアンケート結果を見ましても、やはり例えば株式投資をするということに対して、お金がないからできないという答えの次に、知識がないからできないという答えがその次に多いと承っております。やはりそういった意味で、正しい投資教育というものの認識を改めていただきたいと、このように考えております。
○田村耕太郎君 ありがとうございました。
  それと同じことがやっぱり消費者金融問題にも言えると思うんですね。やっぱり金融教育の欠如というのがああいう多重債務者を生んでいるという側面もあると思いますんで、投資だけじゃなくて、全般的な金融教育というのは非常に大事だと私は思います。
  今度は、藤沼参考人の方にお話をお伺いしたいと思います。
  党本部でもよく議論をさせていただいているんですが、やはり監査法人を巻き込んだ不祥事が今相次いでいるわけですね。根本から考えていかなきゃいけないと思うんですけど、これよく会長にはお話し申し上げているいつもの話なんですけど、やっぱり根本にはインセンティブのねじれという問題があると思うんですね。株主のために監査をするのに、監査報酬や監査人の選定は経営陣によって行われるというケースが非常に多いと。やっぱり経営陣寄りの監査になってしまう可能性が日本の場合高いわけですね。
  それを防ぐためにアメリカでは独立取締役のみから成る監査委員会というのがあるわけですけど、サーベンス・オックスレー法で規定されていますけど。日本はこれからどうすべきかということをちょっとお伺いしたいんですけどね。
  アメリカと同じような監査委員会という制度を義務付ける、上場会社に関しては義務付けるという考えもあります。又は、今、商法の中で監査役という制度、形だけは非常に良くできているんですけど、監査役の選任の仕方が非常に望ましい形になっていないということがありますんで、適合性といいますか、要件をやっぱり法律に書くというのが私は重要じゃないかなと一つ考えているんですね。
  やっぱり一定の会計の知識が必要である。一定の商法、証取法に関する法律の知識も重要であると。経営管理全般についての知識、これも必要である。この三つは、そのメンバー全員でそろえばいいかもしれませんし、一人一人が全部持っていたら一番理想的なんですけど、そういう要件を商法の中に書いていくということも一つの案じゃないかと思うんですけど、参考人はいかが思われますか。
○参考人(藤沼亜起君) ありがとうございます。藤沼でございます。
  正に田村先生がおっしゃるように、監査と監査人の独立性の問題というのは、要するに、一般の方からすれば、監査する企業に選任されて、また報酬ももらっているではないかと、そういうところに本当に独立監査人としての職責が全うできるのかという、これは監査始まって以来の問題でございます。
  それでは、じゃ、だれがその監査報酬を払ったらいいのかという、こういうことでございますけれども、これはずっと議論されてきたわけですけれども、資本市場を利用して資金調達をするという、企業が最大の受益者でありますから、その監査に対して企業は払うということは、そういう面では合理的であると。
  じゃ、実際にその報酬を支払うあるいは監査人の選定にだれがかかわるべきかということで、先ほど田村先生のおっしゃったとおり、欧米諸国では独立の取締役会によって構成される監査委員会のメンバーが経営者とは独立した観点から株主等の利害関係者のことを考えて監査契約あるいは監査報酬を締結すると、決めると、そういうことになっているわけです。
  日本の場合には、残念ながらその外部取締役の外部性についての定義が明確ではないと。そういう面では欧米諸国と比べて本当の意味での独立性がどこまであるのかという問題があります。また、監査役会、監査役の機能というもの、それぞれ権限も強化される方向にありますけれども、本当の意味での経営者からの独立性というのがどこまであるのかというようなことは問題であると思います。
  私はそういう面で、経営者からの独立性、外部性を強めるという、そういう措置が必要なのではないかなというふうに思っておりますし、また、専門性、米国のサーベンス・オックスレー法では、専門性といいまして、最低、オーディットコミッティーの中の一名は経理、財務の専門家を入れろということになっておりまして、そういう専門性も必要であると。
  あともう一つは、やっぱりスタッフ機能の充実ということも、これも見逃してはいけないことだと思います。監査役になったとしても、自分一人で会社、大きな会社の監査を全部、会社に目を光らせるということはできませんので、そのやっぱりスタッフの充実、このこともやはり大事だと思いますので、そういうような包括的な会社内部の、言うなれば外部監査人の味方が強化されるということがあれば、そういう面で監査、このねじれの問題は解決に向かうのではないかというふうに思います。
○田村耕太郎君 もう一つ、今、監査法人、監査人に対する非常に厳しい風が吹いていまして、まあ不祥事が相次いでいますからしようがないことだと思うんですけど、金銭的なものを含めて罰則強化、登録制も導入すべきだという議論、まあ他党の議論は存じ上げませんが、自民党の中の議論に限っていえばそういう傾向になっていまして、ますます風当たりが強いということをお感じになっていると思うんですね。
  一方、そのリスクの方は、監査法人、監査人から見たリスクは高まっているんですけど、じゃ、リターンはどうかというと、やっぱりアメリカなんかから比べると二けた違うわけですね。二けた小さいわけですよね。リスクとリターンが見合ってこないという状況が生まれつつあると思うんですよ。
  そうすると、監査法人、監査人というのは監査すること自体非常に怖がってくる。そうすると、何が起きるかというと、よく分からない企業、新興企業の監査をお断りするという事例が結構出てくると聞きます。そうしますと、監査難民とよく言われるんですけど、監査が受けれない企業がこれから増えてきて、監査が受けれずに財務諸表が発表できないと上場廃止になりますんで、せっかく上場したのにだれも引き受けてくれない、監査を引き受けてくれないということで監査難民が出てくるという可能性があるわけですね。
  このリスク、リターンが非常にアンバランスであるということ、罰則が強化される反面、監査報酬は依然として安いままであると。だったら、そんなリスクは取りたくないから監査しないよと。そして、今度は上場企業に跳ね返ってくるわけですね、上場廃止という形で。こういうおそれが出てくるわけですけど、実際この辺りどうお考えなのか。また、リスク、リターンをバランスさせるためには何が必要なのか。どう思われますか。
○参考人(藤沼亜起君) 監査報酬の問題は、まあ、私が監査報酬安いと言うのも何か余り格好良くないということはあるんですけれども、私ども公認会計士協会で三年ぐらい前に、監査報酬ということではなくて監査時間の国際比較、米国、カナダ、イギリス、フランス、ドイツということで、四大法人からデータをもらいまして、サイズ別に、業種別に比較してみました。監査時間ですから必ずしも監査報酬とは密接、まあ密接に関係しているとは思います。そういう面でやはりかなり大きな差があるというようなことで、日本の監査時間、監査報酬というものはやはり欧米と比べて十分なものではないというふうに思います。
  また、今回いろんな会計不祥事があって、監査人に対する責任強化の問題、あるいは監督強化の問題ということを言われていますけれども、こういうようなことで、監査人、今の段階ではリスクに対して非常に敏感になっておりまして、監査契約、先生のおっしゃるように、新しい企業が来て監査を引き受けてくれと言ったときに、本当に引き受けたらいいのかどうか。
  といいますのは、現在の公認会計士法の中では、監査法人の社員というのは無限連帯責任ということになっておりまして、引き受けたはいいんだけれども、そこがおかしくなっていろんな問題を起こすということになると、会社の不祥事が即座に監査の、いわゆる適正性ということとは関係ないんですけれども、基本的には会社の不祥事に巻き込まれてしまうということで、監査人が萎縮してしまうということが懸念されるわけです。
  そういう面で、特にベンチャー企業につきましては、これ、二〇〇〇年の初めにマザーズですとかいろいろ新興マーケットができまして、そこでいろいろIT企業の経営者の人たちが企業公開して、そこの中にライブドアも入っているわけですけれども、企業道徳、道徳観とかいろんな問題があってああいう不祥事が出てきたわけですけれども、そういう面で、それが過度に監査人が防御的になっているのではないかと、そういうことで監査難民の話が出てきていると思うんですね。
  そういう面で、我々の方としては、今実際に、実は中央青山さんの処分の関係で公認会計士協会にいろんな問い合わせ、相談窓口を設けたわけですけど、問い合わせが来ております。現在のところ約百七十件ぐらいの問い合わせがありまして、中には監査法人を紹介してほしいみたいな話がありまして、それについては協会挙げて対応できるようにしたいというふうに思っています。
  そういう面で、新興企業の経営者の教育等も大事だと思いますし、会計士自身がやっぱりそれに合う報酬をもらえるようなシステムをつくり上げなくてはいけないのではないかなと、というふうに思っております。
○田村耕太郎君 皆さん、ありがとうございました。
  終わります。





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