自己破産とは・・・                                                                



★はじめに
破産宣告の概要
同時破産廃止と管財事件
免責手続
法律家と打ち合わせする際に持参してもらいたい書類
費用の問題


はじめに
 自己破産とは、簡単に言うと、「債務者(借主)の申立て」により、裁判所でなされる債務整理の手続きのことをいいます。自己破産については、「借りたものは返さなければならないから、よくない制度だ。」とか、いろいろ言われているところですが、借金の返済に万策尽きた国民の最後の救済の道といえると思います。事業に失敗したであるとか、どうしても避けられない出費のためにはじめた借金が膨らんでいった場合等には、まさに、救済の道といえるでしょう。
 ところが、世の中には、この制度を悪用する人がいるのです。そこで、破産法では、そういった人は破産申立をし破産決定が出ても、免責決定(免責とは、簡単にいうと、債務をなくしてもらう手続のこと)が出ない仕組みになっています(どのような事由が免責不許可になるかは、破産法第366条の9の規定するところです)。

   実務上、よく問題となる免責不許可事由の代表例をあげておきます。
    @当初から、換金する目的で破産原因がある(支払不能状態)ことを秘して、
     クレジットカードで物品や金券を購入する場合。
    A債権者名簿に、架空の債権を計上したり、一部の債権を除外したりする場
     合。また、破産や免責の審尋における陳述(破産者の発言)や、それ以前に
     裁判所に提出した書類において、財産状態につき虚偽の報告(財産を隠匿
     するなど)をする場合。
    B破産者が、今回の免責申立前10年以内に、かつて免責を得ている場合。
    C破産法上の破産者の義務に違反した場合。

 ところで、問題は、明らかにこれらの免責不許可事由が認められる場合です。実務上よくあるのが、ギャンブルや浪費のための借財や、換金目的のクレジット購入などです。免責を許可するかどうかは、最終的には、裁判官が決めることなのですが、現在の裁判実務では、免責不許可事由が明らかに認められる場合でも、裁判官の裁量により免責決定を与える傾向が強いと思われます(裁量免責と呼ばれています)。

 弁護士、司法書士等に依頼せずに、債務者本人で、自己破産の手続をすることも可能ですが、上記等の問題、他に、債権者が支払督促や貸金返還請求訴訟などの裁判手続をしてきたりするので、法律家に依頼されて、手続をされたほうが心強いと思います。

 自己破産の申立て件数は、昨年平成11年は、年間12万2741件を数えました。つまり、人口割にすると、1,059人に1人となります。鳥取地方裁判所倉吉支部でも、昨年は、およそ140件の申立がされました。

 同時破産廃止事件の場合、期間的には、免責決定を受けるまでに、早くて半年から1年くらいかかります。また、裁判所には、最低でも2回は足を運ばれる必要があります。1回は、破産宣告を受ける前と、免責決定を受ける前の2回があるからです。

  また、破産決定を受けてもそれだけでは、債務を免れることができず、この免責手続を忘れずにする必要があります。この点は、特に注意しておくべきです。 



<破産宣告の概要>

 どこの裁判所に破産の申立をするかといえば、自己破産申立時の債務者の住所地の最寄りの地方裁判所ということになっています。

 裁判所での審尋をうけて、申立人(債務者)の現時点の収入や財産等をもってその負債を支払うことができない(支払不能状態)と認められれば、破産宣告が下されます。

 稀ですが、審尋の結果、支払不能状態でないと認定されると、破産宣告はでません。この場合は、債務者の収入や財産で支払可能ということですので、債務弁済調停等で支払につとめることになります。

 破産すれば、裁判所より「破産宣告決定書」が申立人に渡されます。また、債権者名簿(破産宣告申立書に添付するものです)に掲載した債権者に対しても、裁判所より、破産宣告決定書が送付されます。更に、官報(国の新聞とでもいいましょうか)にも掲載されますが、一般の人が官報を見るのは稀ですので、自分から破産手続をしていることを言わない若しくは債権者が言わない限りは、破産手続をしていることは、他の人には分かりません。

 また、弁護士や司法書士には、守秘義務(依頼者の秘密を守る義務)が課せられていますので、ここからそういう情報が漏れることもありません。



<同時破産廃止と管財事件>

 破産には、「同時破産廃止」と「管財事件」の二つの取り扱いがある事に注意すべきです。

 不動産等の資産がある債務者の場合には、原則として破産管財人を裁判所が選任します。この破産管財人により、資産の処分が行われ、債権者に配当されます。これを管財事件と呼びます。

 他方で、全く資産がないか、めぼしい資産がない債務者の場合には、破産管財人が選任されず、破産宣告と同時に破産手続を打ち切り、すぐに免責手続に入れる場合が一般的です。これを同時破産廃止と呼びます(破産手続を「廃止する」ので、こうよびます)。

 実務的には、個人の自己破産のうち8割から9割は、同時破産廃止といっていいと思います。



<免責手続>

 注意すべきは、破産宣告だけでは(同時破産廃止、管財事件ともに)、債務は消えないということです。

 債務をなくしてもらうには、破産宣告を出した裁判所に対して、別途、免責の申立をする必要があります。

 免責の申立は、破産宣告後に行うのですが、その期限には、十分注意を要します

 管財事件であれば、破産終結時まで
 同時破産廃止であれば、破産宣告確定後1ヶ月以内まで

 となります。出し忘れを防ぐために、早期に提出したほうがいいでしょう。

 これを忘れると、免責を得られないばかりでなく、再度の破産宣告を申し立て破産宣告が出ても免責が出来ないとした決定例があります(破産宣告と同時に破産廃止の決定を受けた破産者が免責申立期間徒過後、再度破産宣告と同時破産廃止決定を得てした免責申立を許さないとした事例 仙台高等裁判所平成元年6月20日)。

 そして、数ヶ月後に、免責の可否を決めるための審尋を裁判所で行い、免責不許可事由や裁量免責を妨げる事情がなければ、免責決定が出ます。これで、破産手続は終了ということになります。



<法律家と打ち合わせする際に持参してもらいたい書類>

 1.債権者(サラ金、貸金業者)の社名、住所(取引の窓口となっていた支店
   の住所でいいです)、電話番号を正確に書いたメモ
 2.債権者(サラ金、貸金業者)から渡された申込書・借用証書などの控え、
   利用明細書、督促状など、お持ちの書類すべて。
 3.戸籍謄本、住民票(記載事項の省略されていないもの)
 4.給与明細や源泉徴収票など、債務者の収入のわかるもの。
 5.不動産登記簿謄本(不動産所有者の場合)
 6.保険証券、車検証、建物賃貸借契約書等
   これらの書類の一部がなくても、債務者が、状況をしっかり説明できれば
   大丈夫です。

   3、4、5、6等の書面は、裁判所にも提出しますので、なるべくなら持参し
   ていただきたいものです。                  



<費用の問題>

 実費 およそ2万円。
 報酬 司法書士に依頼される場合、5万円から15万円くらい。
     個別の事案(個別の訴訟にも対応するかどうかにもよる)にもよります。