貸し金を返してもらいたいが・・・

 とある日の昼下がりに海田さん(仮名)は事務所に来所されました。

 詳しくお話を伺いましたところ、何度も借主の方に貸金70万円の返還を催告されたのですが、何度も返済期限を延長されたあげく、まったく返済を受けることができないということで、誠意ある返済計画の提示もないということでした。

 そこで、私は、本当に返済する意思がないのか、もう一度その方に手紙を書いて返答をもらってくださいと指示をし、そして1週間がたちました。

 海田さんから、借主から誠意ある回答がなかったとの電話をうけ、話し合った上、支払督促をすることにしました。支払督促を申し立てたところ、支払督促に対する相手方からの異議申し立てがあり、通常の訴訟に移行しました。異議申し立ての理由は、分割弁済をしたいということでしたが、海田さんにも借主が分割弁済をしたいと言っているのなら、もう一度だけ待ってみられませんかと進めてみました。

 しかし、やはり今までの借主の方の対応があまりにも誠意のない状況であったようで、分割弁済ではなく一括弁済を望まれました。そして証拠として金銭消費貸借契約書を裁判所に提出し、第一回の口頭弁論期日において当事者に争いがないとして判決が出ることになりました。

 判決はでてもそれだけで本当にお金を回収できるかというとそういうことはほぼありえません。

 そのことを海田さんに告げると、すぐにお金を回収したいといわれましたので、債務者の不動産を強制競売にかけることにしました。

 強制競売の申立てから10日後海田さんに債務者から連絡がありお金を返しますから強制競売の申立てを取り下げてくださいとのことでした。

 そこで、海田さんに債務者に返済金額を通知していただき、銀行口座に入金があったとの事で、不動産に対する強制競売を取り下げしました。

〜あとがき〜

 少額の金銭の貸し借りで泣き寝入りをしている方は、結構いらっしゃるのではないでしょうか。貸主が借主とどういう関係にあるかによって、その貸金の返還を強く要求できるかどうかというのも問題になるでしょう。
 今回のケースは、貸主は借主に何度も督促をするも、誠意のある回答がなかったということで、大変残念がられていました。ここまでしないと貸金を回収できないものかと嘆いてもおられました。
 少額の貸金のことで、司法書士はお役に立てる場面があります。相談してみてください。


支払督促とは・・・

 支払督促とは、貸金、立替金、賃金などを相手方が支払わない場合に、申立人の申立だけに 基づいて裁判所書記官が行う略式の手続です。確定すると、判決と同様の効力が生じます。

 相手方が、「お金がないので支払えない。」とか「そのうち支払いますよ」といってなかなかお金 を支払ってくれないような場合には、この手続によることが考えられます。
 但し、相手方が異議を申し立てると、通常の訴訟手続に移行します。 

<特 徴>
 紛争の対象となっている金額にかかわりなく、金銭の支払いを求める場合に利 用することができます。
 訴訟の場合の半額の手数料(印紙の額)と、郵便切手だけで、申立をすることができます。  

書類の審査だけで発付されますので、訴訟の場合のように申立人が審理の為に裁判所に出かける必要がありません。

 申立人は、相手方から異議の申立がなければ、仮執行の宣言を得て直ちに強 制執行に移ることもできますので、紛争を早く解決することができます。