相続登記はお早めに

 相続登記をお忘れではないですか?
 
 私どもの事務所でもたくさんの相続登記をいたしますが、通常相続登記の依頼を受けますのは、被相続人(お亡くなりになられた方)のある1つの節目、49日であるとか初盆であるとか、お亡くなりになられて1年以内であるとか、また建物を新築される折に被相続人名義のままでは銀行からの借入ができないということですることが多いです。

 建物を新築される場合に、慌てて名義を変えようと思われて、いざ相続登記に着手してみますと、意外な相続人が出て来たりして、思い通りに相続登記ができない場合もあります。また、相続人中に不在者(行方不明者)がいますと、不在者の財産管理人を裁判所に選任してもらって、遺産分割協議をする必要がありますから、やはり時間がかかることになります。

 家を新築されるような場合には、あらかじめある程度の時間の余裕をもって相続登記を依頼されることをお勧めいたします。


 相続登記は、いつまでにしなければならないということはないのですが、放っておくと大変なことになるという1つの事例を挙げてみましょう。
 倉吉市福庭は、きれいに区画整理がなされ、道路も整備され、最近めまぐるしく宅地化が進み、いろいろな施設・店舗等が立ち並ぶようになりました。なんとその裏でこんなことがありました。
 
 とある方から、相続登記の依頼がありました。もちろんそのお方は、相続人のお1人であり、本件相続登記をすべき土地を管理されてきたお方でした。そのお方のお名前を仮に静子さんとしましょうか。静子さんは、60歳くらいだったでしょうか、ご自分の3代前の名義人の土地が買収にかかるということで、何とか自分の名義にしたいという趣旨のご依頼でした。

 さあ、相続人の特定をするべく調査を開始してみますと、なんと相続人が53名もでてきたではないですか。ある方は東京に、ある方は大阪にと全国各地に相続人は散らばっていたのです。さあ、困りました。
 通常相続登記をいたしますのには、相続人全員の方から遺産分割協議書に実印を頂き、印鑑証明書も用意していただくのですが、なにせ相続人が53名。果たして無事に相続登記ができるか。静子さんに聞いてみますと、何とかほんの身内については実印、印鑑証明がもらえるということでしたが、他の方については面識もないということでした。
 
 さあ、どうするか。いろいろ協議した結果、静子さんはずっと本件土地を管理してこられ、本件土地の固定資産税、賦課金等を払ってきておられた経過がありましたので、時効取得による所有権移転登記請求訴訟を相続人すべての方を相手に提起することにしました。
 本件土地の面積は160uほどでしたでしょうか。相続人各人の相続分を考慮してみると、2uから3uの持分しかないのです。それでも相続権を主張する者があるかも知れません。訴えを提起して、10日ばかりもしますと、相続人さんから静子さんに盛んに「どういったことなのか」という問い合わせの電話がたくさんまいりました。静子さんに応対していただいたのですが、10人ばかりの方から電話があったということです。しかし、皆さんが先代若しくは先々代に鳥取を離れられた方で、静子さんといろいろお話をされ、ご理解いただいたということでした。
 そして、口頭弁論の日、相続人すべての方が欠席され、欠席裁判により勝訴。その後、どなたからも控訴の申立がなく、判決確定。その判決に基づき相続登記をいたしました。そう、この登記依頼を受けてから、半年は経っていたでしょうか。

 こんなこともあるのです。
 また、これに似た事例にこれから着手することになります。果たして、静子さんの時みたいにうまくいきますかどうか。また後日談をご報告できる時が来るでしょう。