尿失禁(女性、腹圧性尿失禁) 

  医療の世界では,しばしば quality of life(生活の質の向上)という言葉が用いられる.おしっこは,どんな人でも必ず毎日数回いく.このおしっこのコントロールがうまくいかないと毎日の生活はゆううつなものになる.頻尿とは,おしっこの回数が多いこと,尿失禁とは自分の意志に反しておしっこがもれることを言う.

  日本では最近になって,ようやくマスコミで話題とされる事が増えてきが,いまだ十分でなく,悩みをもちながらもどうしてよいかわからず我慢している人が多い.おしっこの回数が増えるのは年をとればあたりまえだとか,くしゃみや咳でもれるのはある程度しかたがないとか,治らないものとしてあきらめていませんか.頻尿や尿失禁にも原因がはっきりしているものが多くあるが、正確な診断をすればよくなる病気である.

  咳やくしゃみの瞬間におしっこが漏れることはありませんか.布団をひょいと持ち上げた時におしっこが漏れることはありませんか.合唱団で大きな声を出したとき,子供を大声でしかりつけたとき下着がぬれることがありませんか.

  これらはすべて腹圧性(ストレス性)尿失禁の症状です.主に更年期を過ぎた女性に特有の症状ですが,若いひとにもあります.20-40台の女性のうち約30%の女性が経験すると言われてます.

  失禁という言葉がきついため,この症状を経験すると塞ぎ込んでしまう人が少なくありません.おしっこの漏れは結構みんな悩んでいる症状なのです.子供をたくさん生んだせいとあきらめ,ナフキンをはなせないひと,なかにはオシメをあてて我慢してる人もいるようです.



  腹圧性(ストレス性)尿失禁は治る病気です.ナフキンやオシメとさよなら出来ます.しかも軽症の場合は簡単な体操を繰り返すことで十分です.少しすすんだ症状でも最近は良く効く薬が開発されました.手術を必要とするような重症のひとはほんの一握りです.

  尿失禁をきたす病気には腹圧性(ストレス性)尿失禁以外にもあります.子宮や直腸の手術を受けた人に起こることもあります.前立腺肥大症の初期にも認められます.先天的に尿を運ぶ管の連絡が悪いこともあります.それぞれ有効な治療法が開発されており,原因をしっかり突き止めてもらうことが重要です.

  尿失禁は命を脅かす病気でないため、とかくおろそかにされがちです.医療サイドにも問題があり,寝たきりの老人や脊髄損傷の患者さんに安易にオシメやカテーテルの留置ででかたずけてしまう傾向があります.尿失禁の子供たちに対する対処も同じことです。

  オシメだけでは何も解決しません。ホットするのは周りの家族と看護者だけです。こうした安易な処置がどれだけ悩める人の心を傷つけているか考えたことがありますか。自分がこのような立場に遭遇したときのことを考えれば一目瞭然です。

  尿失禁の苦しみは老若男女を問わず、人に言えない悩みのひとつですが、その多くは解決が可能です。くよくよ一人で悩まずに泌尿器科専門医に相談してみることです.

その他の神経の障害


  おしっこをためたり出したりできるのは,自律神経という神経が働いているからで、この自律神経は,いろいろな病気で障害を受ける.そうすると前回説明した蓄尿機能や排尿機能がうまく働かなくなり頻尿や尿失禁が生じる.代表的な病気に,脳梗塞や脳出血などの脳疾患,脊髄損傷,子宮の手術後や直腸の手術後,糖尿病など.恐ろしいのは,こういう病気が原因で頻尿や尿失禁になっている場合,治療が遅れると腎臓の働きが悪くなって尿毒症になる恐れがあること.

  その他,日常生活で注意することとして,便秘と太り過ぎがよくない.どんな病気にも共通することだが,規則正しい生活をすることが大切である.

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