離婚したいが・・・  (長野県司法書士会会員)

 昨年の10月24日、知人の紹介でA子は事務所にやってきた。話を総合すると、A子は先夫との間に長女U子と長男次男の3人の子供がいたが、訳あって離婚し、長女U子はA子が引き取って生活していたところ、一見真面目で優しく見えるB男と知り合うようになり、U子の同意を得て昭和61年春に再婚した。しかしながら、B男にも先妻との間にできたM子とK子の2人の子供が同居しており、病弱な祖父もいた。こうしてA子は病弱な祖父の看護をしながらの生活が始まった。しかしながら、祖父は昭和61年12月看護の甲斐もなく他界した。そこでA子はパートに出るようになった。

 しばらくして、B男はU子を厄介者扱いし始めたが、それはU子もB男になじめなかったし、批判的であったためでもある。B男はA子に対しU子をかわいがりすぎることや、自分の子と平等に扱えなどと言いがかりをつけるようになり、食事のこと、弁当のおかずが平等でないこと、衣類所持品についてまで良い物を与えないよう注意するなど、次第にエスカレートしていった。

 B男は、結婚してみると真面目で優しいところもあるが、非常にお金に執着し、お金しか信じようとせず、もらってくる月給約40万円のうち生活費のみを渡すのみで、A子のパート収入を加えても生活が成り立たないありさまである。その他のお金は全部預金してしまい、預金額としてはかなりの額がある。あまりの耐乏生活と気が小さく、お酒を飲むとすぐに暴力を振るうので痣が絶えず、暴力に絶えかねて、やむなく昨年7月にU子を連れて家出した。しかし長くは続かず、約10日ほどで戻ってしまった。U子が高校を卒業したいことと通学が困難であったからである。

 暴力を振るわれ、口を利かない日々が一ヶ月くらい続いた後、B男から世間体もあるので離婚はできないが、別居ならしてもよいと言い出した。しかしそれには条件が二つあった。一つは離婚の場合を考えて、一切の請求権放棄の誓約書を書くことであった。何よりも財産をとられることを恐れ、いかに支払いをしないですむかを考えてのことである。もう一つは別居は自分で出て行くのだからアパート代のみ月3万5千円払うが生活費は自分で工面することであった。仕方なくA子は一切の権利を放棄する旨の誓約書を書いて昨年11月別居するにいたった。

 しかし、パート収入月約7万円くらい、U子もアルバイトをして月約3万円くらい、合計約10万円では、光熱費を支払った残りで生活することは困難であった。そこで市の児童扶養手当月3万5千円の支給を求めて福祉課に相談したところ、離婚すればすぐに出るが別居では一年以上継続していないと支給できないとのことであった。しかし、離婚にはB男がすぐに承諾するはずがなく、児童扶養手当はあきらめなければならなかった。A子は暴力から逃れ、今後の離婚調停を進めるためにも、生活が維持できる態勢を作っておく必要にあった。また、調停中、B男の暴力からくる脅迫をいかに防ぐか考えていく必要もあった。