遺言をしておきたい   (大阪司法書士会会員)

 昨年の八月の中旬頃、帰省の準備をしていた時、突然私の友人から、「知り合いのおばあちゃんの相談に乗って欲しい」との電話があり、お盆明けの日の朝に事務所に来て頂くとの約束をしました。
 盆休みの明けた日の一番にそのおばあちゃんが事務所にやってきました。

 おばあちゃんの相談内容を整理すると、次のようでした。おばあちゃんの御主人は、20年前に亡くなられ、、現在2人の息子さんがいます。おばあちゃんは長男夫婦とおばあちゃん名義の家に住んでいます。ところが最近次男夫婦が経営していたスポーツ用品店が倒産した為、次男の借金のために銀行に担保提供していたおばあちゃん名義の不動産が差し押さえられました。しかし、長男が次男の借金を返済したのでおばあちゃんの不動産が競売から免れた。その結果おばあちゃんと長男夫婦は今でもその家にすむことができるということでした。

 しかし、次男夫婦がまたしてもおばあちゃんの不動産を担保に銀行から借り入れして、事業をしたいといってきており、長男夫婦がそのことに強く反対したため、兄弟の仲が極端に悪くなっているとのことでした。おばあちゃんは現在心臓病を患っており、この先健康に自信が持てないことや、次男の借金を長男が返済しておばあちゃんの不動産を守ってくれたこと。また、現在も長男夫婦と同居しているので、おばあちゃんは自分が亡くなったとき、相続で兄弟で争うことになるのは非常に心苦しい。できたら長男に自分の不動産を相続させたい。そのためにどのように遺言すればいいのかということでした。

 私は、遺言の方式はいろいろある事、また、遺言内容はいつでも変更できることなどを説明し、遺言の方式についてはもっとも安全な公正証書遺言を勧めました。というのは、公正証書遺言は、公証人役場に記録されますので証拠力も非常に高いですし、また遺言内容も変造されにくいという利点があるからです。公正証書遺言には利害関係人以外の2名の証人が必要ですが、おばあちゃんの要請で私と事務員が証人になることになりました。それから三日後、必要書類を事務所で確認して、私達三名は公証人役場に出かけ公正証書遺言の手続をしました。公証人が筆記した遺言の内容を読み聞かせていたとき、おばあちゃんが一字一句確認するようにうなずいていた様子が記憶に残っています。